天下の険を超える5月

さいたま近隣紀行
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Einst war der Frevel an Gott der grösste Frevel, aber Gott starb, und damit auch diese Frevelhaften. An der Erde zu freveln ist jetzt das Furchtbarste und die Eingeweide des Unerforschlichen höher zu achten, als der Sinn der Erde!

Friedrich Wilhelm Nietzsche [Also sprach Zarathustra]

かつて最大の罪は神に対する罪であったが、神は死に、これらの罪人も死んだ。今や、自然を冒涜することは最も恐ろしいことであり、自然の心より不可解の営みを尊ぶことだ!

DeepL先生 訳

不可解な市場頼みで見通しの悪いFIRE計画に疲れたじじいが神仏頼みや現実逃避をする内容です。

 

 早起きは三文の得と言いますが、普段早起きせずに損しまくっている私としては厳しい時間に起床して新宿に行きます。昨年末に1枚510円で買った小田急の株主優待券を5月のうちに使い切らないと無効となるため天気が良い日を狙ってお出かけです。

 久しぶりに新宿で乗り換えたら、通路の構成とか思いっきり変わってしまっていて浦島太郎です。

 朝の7時過ぎに小田原ちょうちんのある、小田原駅に到着です。お金に糸目をつけなければJRだけで来られたのですが、時間で金を買います。丹沢の眺めは良いし、そこまで時間差が生じるわけでもないので、小田急は普通に良い選択肢です。

小田原駅を出ると右手に小田原城の天守閣が見えます。このあたりには学校が多いのか、まだ7時過ぎたばかりというのに、登城するお侍さんよろしく生徒が城に向かって行きます。

 忙しい生徒は天守閣前まで用事がないらしく、お城の中は私を含めて暇を持て余した年代の方々ばかりです。ここまで良い天気だと隣の国あたりから結婚衣装の撮影でもする人がいそうでしたが、そんな人もいませんでした。

FIREじじい
FIREじじい

ベタすぎてバズらんのかのぉ

たぬきましん
たぬきましん

ビンボーなじじいよりは歓迎されるのにね

 ベタな観光はここまでにしておき、駅と反対側にお城を出ます。

 大きな通りに出るとそこは

 そこが天下の国道1号線、旧東海道です。

 本日は東海道の難所である箱根八里を(金がかからない)歩き通して精神の修養を図ります。

たぬきましん
たぬきましん

じじいの精神はもう手遅れだけどね

 天下の国道1号線といえど、途中で歩道が途切れたり、歩行者進入禁止の道路しかつながっていない交差点があったりする初見に厳しい道のりですが、箱根の入口である箱根湯本までは1時間くらいで到着しました。

 ここで国道1号線は東海道ではなく、箱根登山鉄道沿いのルートを取るようになります。徒歩のじじいは車のプレッシャーが少ない旧道、つまり東海道に沿って歩くためここから登り坂に入ります。

 旧東海道は湯元の温泉街中心部は通らないルートですが、温泉の公衆浴場があるところを地元の人が行き来する日常ルートになっていました。基本的に坂なので日常生活を送るだけで足腰の鍛え方が違いそうです。

 道の脇には新緑の木々がそれはもう元気に成長中です。

 そんな明るく開けたところから、家が途切れると

 昔の旧東海道だったころの風情を残す石畳の道を登ったり降りたりします。

FIREじじい
FIREじじい

石畳の方が足に負担がかかる気がするんじゃがのぉ、滑るし

たぬきましん
たぬきましん

ぬかるまないのがメリットだよね

 小田原と箱根の間にあった畑宿の宿場町を通り抜けます。外国人旅行者の人が朝イチのバス待ちをしていましたが、ここに泊まるというのはなかなか通好みな選択をされております。

FIREじじい
FIREじじい

インバウンドおそるべし……

たぬきましん
たぬきましん

じじいはGoogle翻訳なかったら海外で詰んでたよね

 町外れのお寺を過ぎると、また歩道に入り旧勾配の坂と対峙します。

 そんな坂を果敢に攻める自転車ガチな方々がかなりの人数いらっしゃいます。

FIREじじい
FIREじじい

自転車に乗れはするが、あの速度でこの坂は無理じゃ……

たぬきましん
たぬきましん

人間としての出来が違うんだよ

 どうにかこうにかして坂を登り切ると、勾配はゆるやかになります。

FIREじじい
FIREじじい

舗装道路バンザイ

たぬきましん
たぬきましん

やっぱり文明って良いよね

 江戸時代にここが東海道だったころから続く甘酒茶屋には、インバウンドを含めてお客さんがいるものの

 隣の休憩所兼資料館は人がいません……

FIREじじい
FIREじじい

このあふれる昭和感がええんじゃけどのぉ

たぬきましん
たぬきましん

コンセプトは江戸時代だよ

 甘酒茶屋から少し登り&がっつり下ると芦ノ湖に到着します。

FIREじじい
FIREじじい

思いっきり風が強くて難儀したんじゃがの

 芦ノ湖の岸辺を歩いて、箱根神社の参道に向かいます。

たぬきましん
たぬきましん

レンズが汚れてなあい?

FIREじじい
FIREじじい

飛沫をそのまま放置しておった

 メンテナンスは大事です。

 インスタ映えスポットで名高い湖上の鳥居です。私がセルフィーをアップしてネット上にこれ以上害悪を撒き散らしてはいけないので、自撮りのために並ぶ国内外の人々の列を素通りします。

 参道のシャクナゲも咲き始めでした。この先にある山のホテルにあるシャクナゲ園が有名ですが、コロナの頃に来ておいたので本日は箱根八里超えに専念します。

 苔むした狛犬の横を通って、神域にお邪魔します。

 何が上か下かという話に意味はありませんが、3月にいった鴻神社が鴻巣総鎮守になっている一方で、こちらの箱根神社は関東総鎮守というスケールの大きなことになっています。

 ご利益は開運や縁結びだそうです。

FIREじじい
FIREじじい

縁結びは鴻神社とおんなじじゃの

たぬきましん
たぬきましん

じじいには手遅れだけどね

 箱根神社と同じ敷地にある九頭竜神社にもお参りします。鳥居の前には、9つの龍の口からご神水が流れてくるギミックがあります。

たぬきましん
たぬきましん

ギミック言うなし

 拝所の前には大きな龍の天井がが描かれています。つまり、龍に見られながら拝むことになります。

 今年の干支である龍の神様にお参りし、これで私の金運も……

たぬきましん
たぬきましん

それ、もうなんども聞いたよ

 お参りを済ませたので、再び歩き始めます。ここまででまだ道のりの半分くらいしか歩けていません。

 箱根関所そばのツツジは見頃でしたが、関所には立ち寄らずスルーできる文明開化に感謝して先を急ぎます。

 箱根駅伝往路ゴール付近にある襷のモニュメントです。

 箱根神社の鳥居まで来ると、ゴールまでもうすぐそこという気がしますが、歩いてみるとそれなりの距離があります。むしろ、一日でここまで走ることはない距離です。

 これまた由緒の有りげな神社の脇から、昔の雰囲気を残す東海道の石畳を歩きます。ここから峠までずっと坂が続きますが、坂にいちいち名前がついているものの今ひとつその区切りがわからずじまいだったりします。

 峠の近くは車道と歩道の違いが分かりづらかったりしますが、鬱蒼とした山道とは打って変わって、峠は開けた場所になっています。

 峠からはまた旧東海道に沿った道があるはずでしたが、5年前から通行止めだそうです。

 国道1号線を下ることになりますが、静岡側は歩道が完備されていてとても歩きやすくなっています。東京周辺ではもう終わっているツツジもまだ見頃です。

FIREじじい
FIREじじい

やはり下り坂は良いもんじゃな

たぬきましん
たぬきましん

じじいの人生はいつも下り坂だけどね

 それでも、歩ける旧道に入ってみると、東海道の時代から目印になっている岩が残っていたりと歴史の残り香があります。秀吉が休んだという話の方が面白いのですが、客観的かというと……です。

 山道の道中、施行平という展望所に立ち寄りました。立ち寄ったというより、展望所の案内が出ていたのでノコノコ歩いて行ったところ、そこで道が終わっていたのですごすごと引き返すことになりました。明治天皇がここからの景色を称賛した記念碑が建っているだけあって、伊豆半島と海の景色は見事です。三島の街を見下ろしていますので夜景もすごいようですが、夜に来たら遭難する自信があります。ここから右に視線を移して行くと富士山も見えるポジションです。

FIREじじい
FIREじじい

地図の上では道が続いているんじゃがのぉ

たぬきましん
たぬきましん

自信のない道を行くのダメ!ゼッタイ!!

インバと同じ!!

 旧東海道に戻って、笹の合間を縫って下ります。この笹はハコネタケというこのあたりの品種だそうですが、普段の笹ってどんなものだったかあまり意識していないので違いが……

 杉の林と違って、木漏れ日があるのでまだ残っているツツジの花とはコントラストが出来ています。

 さらに下っていくと、藤の花がまだ咲いている山中城跡に到着します。

 先月の徘徊記録で立ち寄っている鉢形城跡と同じく、後北条氏の城で100名城です。

FIREじじい
FIREじじい

堅牢に作っていたはずなのに、秀吉にあっさり落とされたのも似ています

たぬきましん
たぬきましん

余計なことは言わなくていいよね

 鉢形城と同じく、石垣に頼らずにまさに「土」を「成」ことで広い土地をゾーンディフェンスに適した構成に作り上げていますが、これを解説するほど廻る体力が残っていないのでこれだけは申し上げておきます。

FIREじじい
FIREじじい

城の向こうに富士山バッチリ!

たぬきましん
たぬきましん

お城の説明になってないよね

 山中城を過ぎると、民家がチラホラと見えてきます。

 ちょうど時期だったので、知事選のポスターが掲示されていました。

FIREじじい
FIREじじい

受付番号1番の人は、ポスター貼らなくてええんかの

たぬきましん
たぬきましん

たぶん、貧乏なじじいだけには見えないんだよ

 下ってきた坂を振り返ると、冗談みたいな勾配で登りで通りたくはなくなりますが

 坂の下を眺めてもまだまだ標高が高いままです。

 国道1号線ではない旧道ですが、過去に東海道だった名残が残っている道をさらに下ります。

 ネコと和解する画像ネタになりそうな光景も残っています。

 西側の視界が開けると、住宅地の向こうにくっきりと富士山が見えるようになります。

FIREじじい
FIREじじい

黒い幕なんて掛かっていないぜいたくな眺めじゃのぉ

たぬきましん
たぬきましん

関東平野民には足腰が厳しそうだよね

 東海道線の東海道踏切まで来ると、三島の市街地に入っていきます。

 三島の街の真ん中に鎮座するのが、伊豆国一宮である三嶋大社です。

 こちらの桜は早咲きなので、青春18きっぷ時期に三島始発を待つついでに見に来たことがありますが、今回は神池の中に鎮座する厳島神社が新緑の桜に囲まれています。

 

 立派なしめ縄のある総門をくぐり、北条政子のゆかりの品が収めてある宝物殿の横を通り

 意匠が凝っている神門をさらにくぐります。

 正面からは分かりづらいのですが、変わった造りをしている本殿です。神職の方が作業しているところをお邪魔して参拝完了です。

 三嶋大社から三島駅に向かう道すがら、街なかからも見事な富士山が見えます。

 と、余韻に浸る余裕もなくきっぷを買って(Suicaが使えないので)いるうちに時間がなくなったので、電車までダッシュすることになりました。

たぬきましん
たぬきましん

やめよう、かけこみ乗車!

FIREじじい
FIREじじい

おお! リゾート21じゃ!

たぬきましん
たぬきましん

おじいちゃん、いまは黒船電車っていうんですよ

 根府川駅からのオーシャンビューはいつ見ても良いです。

 短い電車での休憩タイムを挟んで、早川駅で降りて小田原漁港へ。

 アジフライを頂きたいところですが、昼を過ぎるとほとんどお店はやっていません。

FIREじじい
FIREじじい

むろん、金欠でもあるんじゃがな

 漁港から小田原城まで歩いて、城の敷地内にある日暮れの時間に報徳二宮神社へやってきました。

 境内の青紅葉に赤いままの葉っぱが映えます。とても手入れされた境内です。

 そんな境内での結婚式が一押しのようです。

FIREじじい
FIREじじい

独り身のじじいには関係がないがの

 系列の建物では「小田原で会議プラン」もご用意されているそうです。

たぬきましん
たぬきましん

小田原評定の意味を踏まえたツッコミを入れた方がいいのかな

 金属製の鳥居をくぐると

FIREじじい
FIREじじい

ながら歩きしている人の像があるぞ

たぬきましん
たぬきましん

最後に残った貴重な像らしいんだよね

 ステレオタイプな二宮金次郎像が鎮座しています。解説板によると、ブロンズ製の像はこれだけしか残っていないそうです。

 日が沈みかかっている本殿に参拝を済ませます。

 夕日に照らされた小田原城天守閣を後にして

 小田原駅から夕暮れに浮かぶ小田原城を眺めてから帰りの電車に乗ります。もちろん、金券ショップで買った小田急株主優待券を使います。

FIREじじい
FIREじじい

疲れすぎて、座ったら動けんかった

たぬきましん
たぬきましん

隣のインド人家族に会話を試みるコミュ強の女性がインパクト大

ご利益メモ

【訪問先】 箱根神社・九頭龍神社新宮

【宗教宗派】神道

【創建】  今の場所に鎮座したのは757年

【祭神本尊】ニニギノミコト、コノハナサクヤヒメ、ココホホデミノミコト

●来訪メモ
 箱根の山を祀る古代からの神社。正月に若人が山をものすごい勢いで駆けていくイベントで鳥居が大写しになるものの、神社はそこから奥まったところにある。
 芦ノ湖に浮かぶ鳥居は定番の映えスポットでかなり並ぶため、じじいのようなボッチは順番入れ替えのスキを見計らって撮影すれば、リア充な方々の邪魔をせずに済みます。
 奥宮は駒ケ岳の山頂にあるそうですが、箱根八里超えを小田原からそこまで登るのは非常に健脚であることが求められます。そこまで壮健なら何を願うというのか。
 九頭竜神社は本宮がさらに奥まったところにありますが、私設庭園の中にあるので参拝には入園料が必要になります。こちらも人身御供の伝承など、古くからの信仰が残るところです。
 箱根神社は鎌倉幕府とも縁が深いそうで、境内には御成敗式目の一節「神は人の敬により威を増し、人は神の徳により運を添う」が掲げられています。
ご利益メモ

【訪問先】 三嶋大社

【宗教宗派】神道

【創建】  8世紀より前

【祭神本尊】大山祇命、積羽八重事代主神

●来訪メモ
 伊豆国一宮で、三島は伊豆諸島を意味するらしいと言われるものの、山の神様を祀っている古社です。箱根神社と同様に鎌倉幕府の立ち上げにも関係しているそうで、北条政子の蒔絵が神社の所有物で国宝です。
 三島駅から向かうと、富士山の伏流水が流れているという小川に沿って歩くとたどり着きます。途中には富士山の溶岩と言われる岩もあります。富士山の祭神は箱根神社にも祀られている木花咲耶姫で大山祇命の娘なので、たしかに山との関わりが深い神社です。ここから箱根までずっと登坂ですし。
 狛江市のサイトで三島神社の記述が充実しており、そこには三嶋大社の氏子さんはウナギを食べなかったことを書いています。これは大山祇命がヘビの姿をしていることが多いことに由来しているそうですが、現在では大鳥居の向かいには鰻屋さんがあります。
 Twitterにも書いたとおり、縁起物として白蛇財布を配布されていますが、畏れ多いので買わずじまいです。
ご利益メモ

【訪問先】 報徳二宮神社

【宗教宗派】神道

【創建】  明治27年

【祭神本尊】二宮尊徳(金次郎)

●来訪メモ
 幕末期の著名経営コンサルタントというより、戦略コンサルタント的な立場を平民でありながら一人でやり遂げた二宮金次郎を祀るため、かつての職場である小田原城の一角に設置されている神社。
 小田原城天守閣から降りてきた方が駅からは近いものの、駅の反対側となる藤棚の方から入った方が鳥居をくぐって参拝ができます。
 境内には二宮金次郎像が鎮座している他、所々の事情で手放すことになった金次郎像の受け入れも行っているとのこと。
 小さなころから必死に勉強したことがクローズアップされがちですが、人生の中盤になってからも八面六臂の働きで、50を越えてから小田原の飢饉を救済するなどの活躍をされているとのこと。
 小さな頃から努力したわけではなく、50過ぎたらFIREしたいと世迷いごとを言う人間が訪れて良いのかはわかりませんが、今もたくさんの方に敬われている様子です。
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